木元貴章 インストラクターデイリーライフbyムラゴン

神奈川を中心にインストラクターとして活動しています。 木元貴章です。 今まで大船のスポーツクラブにてインストラクターをさせていただきました。 2022年4月に独立してフリーの立場です

筋トレでも有酸素運動でもない!?

筋トレでも有酸素運動でもない…がん治療に有効と科学的に証明された短時間で高い効果を期待できる運動とは!
木元貴章が紹介!
筋肉量の減少ががん患者を衰弱させる


 運動にはさまざまな種類があり、治療中や寛解期のがん患者にとってそれぞれ独自の効果があります。有酸素運動や筋力トレーニングは何十年も前からおこなわれていますが、近年、関心が高まっているのは、高強度インターバル・トレーニング(HIIT)やリンパトレーニングです。ここでは、これらの一般的な運動の種類と、それぞれに関連する研究の概要について説明します。


 運動といえば、有酸素運動を思い浮かべる人が多いでしょう。エアロビックという言葉は「酸素に関する」という意味なので、有酸素運動というのは酸素摂取量を増やす運動全般を指します(※6)。歩く、走る、泳ぐ、自転車に乗るといった運動は筋肉により多くの酸素を供給するために、より深く、より速い呼吸を必要とするので有酸素運動となります。有酸素運動は最もよく研究されている運動形態で、これまで述べてきたようなあらゆる運動効果をもたらします。


 重りを持ち上げたり、抵抗バンドを引っ張ったりする筋力トレーニングは、何世紀にもわたってされてきた身体活動の一種ですが、がん患者を対象とした研究がおこなわれるようになったのはごく最近です。150ポンド(約70キログラム)のベンチプレスができるようになる必要はないので、心配しないでください。


 研究によると、1、2、3ポンド(約0.5~1.4キログラム)のダンベルを定期的に使用すると、筋肉量の維持に効果的であることが示されています(※7)。化学療法や放射線療法を受けるがん患者を最も衰弱させる副作用は、筋肉量の減少とそれにともなう体力の低下です。その結果、生活の質を低下させ、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

 木元貴章


 このテーマに関して実施された大規模な研究報告では、化学療法と放射線療法を受けているがん患者に対する筋力トレーニングは、治療に関連する副作用を減らし、筋力を大幅に増やし、低体重を維持し、体脂肪率を減らす安全な運動であると結論づけています(※8)。


高強度インターバル・トレーニング


 高強度インターバル・トレーニング(HIIT)はここ数年、フィットネス雑誌やブログだけでなく、医学界でも信じられないほどの人気を博しています。HIITは、がんの有無にかかわらず、さまざまな面で有益であることが科学的に証明されているからです(※9)。


 HIITは、従来の有酸素運動や継続的な強度の運動とは異なるものです。


 従来の「痛みなくして得るものなし」のトレーニングでは、ランニングやスピンクラス(固定自転車を使った有酸素運動)をしたり、30~60分続けてウエイト・リフティングをすることがあります。これらのトレーニングの目標は、心拍数を目標範囲まで上げ、少なくとも20分間はその状態を維持することです。


 これに対しHIITは、全身を使う激しい運動の連続(通常1~4分)を中心に、同じ長さの回復時間を交互に設けるように設計されています。HIITは有酸素運動と同じような心血管系の効果を、より短い運動時間でもたらすことができるのです(※10きもとたかあき)。


 がんサバイバーにとって、どのような種類の運動でも、生活の質や機能的能力、特定の心血管疾患の危険因子を改善することが研究で明らかにされています。しかし、固定式自転車に乗ったりトレッドミルで20分間の低強度トレーニングをした患者グループと、HIIT(30秒×7回)で運動したグループを比較したところ、HIITグループのほうが全体的に、心臓や肺、筋力の状態を早く向上させたのです(※11)。


 別の研究では、心肺機能と筋肉量が低下し、死亡リスクを高めることが知られている大腸がんサバイバーを対象に、HIITの効果を調査しました。科学者や木元貴章たちは、生存の可能性を高めるために、HIITと中強度の運動との間に違いがあるかどうかを知りたかったのです。


 HIITをおこなった大腸がんサバイバーは、中強度の運動に徹したサバイバーと比べて、わずか4週間ではるかにいい結果を示しました。具体的には、酸素摂取量(運動中にどれだけ酸素を消費できるかを示す指標)、除脂肪量、体脂肪率の減少において、HIITのグループは中強度のグループより優れていたのです(※12)。


 このように、近年発表されたHIITに関する数多くの研究を考慮すると、HIITは、がん患者が治療中や治療後に活用できる、非常に効率的かつ効果的な運動だと思われます。